世界観 2017/05/27 ヴォイニッチ 魔法とよばれる術 おおよそはじめまして、またはお久しぶりで。 『はじまりはじまり』から『おしまい』まで、 パンドラ童話集のあれやこれやに関する情報を収集している私、名前はヴォイニッチ。 本日ご紹介するのは、『魔法』について。―パンドラワールドにおける『魔法』の定義 さて、魔法についてだが、魔法のことを『人力以外の不思議な力』などとしてしまうのは、いささか乱暴な定義といえよう。 なぜなら『不思議な力』といってもその仕組みは多様だから。 しかしあまりも細かく定義していくと専門的になりすぎる。 なので入門として、今回は魔法の定義を以下のようにわけたいと思う。 世界に干渉する力…魔法 誰かに力を借りる力…召術 生命力に干渉する力…気術 物体に干渉する力…錬術―『魔法』とは? 魔法をおおざっぱにいうと、『世界の仕組みに干渉し、森羅万象(自然や事象)を操る』ことである。 例えば、火が発生する仕組みに干渉することで、本来起きるはずのない場所に火を起こしたり、火力をあげたりすること。 例えば、土や振動に干渉し、隆起させたり地震を起こしたりすること。 例えば、重力に干渉し、限りなく重力を減退させたり、または増加させたりすること。 例えば、空間に干渉し、瞬間移動を行ったり、時間を早めたり遅めたりすること。 このように、意識やエネルギーに干渉するのではなく、仕組みそのものに触れる技術なわけである。 魔術、 妖術、 魔女術、 一部の呪術、 一部の神術、 法術、 奇跡、 このようなものが魔法に分類されるだろう。 これらには根幹的な違いはなく、攻撃的なものが魔術、回復や補助などが法術など、性質的な分類で呼び名がかわることがある。 または、悪魔などが使えば妖術や呪術、神父や信徒が使えば神術と呼ばれたりと、扱う者の特徴でかわることもある。 が、あくまでイメージ的な分類に過ぎない。 魔法を使う…つまり、世界に干渉する際は、呪文や儀式的な道具などを用いたりすることが多い。 これは世界への干渉…つまり、世界との会話とでもいえばいいだろうか? または、皆さんの世界でいうならばパソコンなどをイメージしてもらうのがいいだろうか? 『世界というモノ』に向けて『命令(お願い)』をするわけだが、世界の言語は根本的に人間のものとは違う。 その翻訳機であったり、辞典にあたるものが魔導書や道具というわけである。 が、人によっては視線を向けただけで発動させることもできる。 つまり、道具や辞典などなくても他国のモノと意思疎通ができるようなものだろう。 これは『世界』への干渉力の差で、適性が高ければ高いほど、より簡素な手続きで魔法を引き起こすことが可能となる。 なお、より大規模な魔法にはそれなりに大規模な干渉を行う必要がある。 つまり、より適切な表現やより長文を翻訳する必要がでてくる。 こうなると、どれだけ道具や辞典を所持してようとなんともならない案件にもぶつかる。 どれだけ勉強したところで、元々その言語を扱うモノ以上に喋れるのは稀なのと同じだ。 そういう意味で魔法という概念は、修練よりも才能に重きが置かれる技術といえる。 なおそんな魔法は、時代が進むにつれ扱える者が少なくなり、また扱える規模も縮小していく。 それにかわるように台頭していくのが、錬金術や連式術といった、錬術である。―『召術』とは? 召術とは、『自分以外の生命体や意識体から、力や能力を授かる、またはそのものを呼び出す術』である。 例えば、火の精霊(体そのものが火でできている)を呼び出すことで、火をおこす。 例えば、神という存在に助力を乞い、本来起きるはずであったできごとを起きないようにする。 例えば、獣のような存在を呼び出し、その獣のに戦って貰う。 例えば、悪霊を体に宿し、その悪霊の力を上乗せして自身を強化する。 このように、力の行使には必ず何者かの存在(力)が必要なわけである。 召還術、 精霊術、 妖精術、 一部の呪術、 一部の神術、 このようなものが召術とされる。 呪文や道具を用いる点では魔法と類似した力といえる。 対象に働きかけて力を引き出したり、何かを行う部分でも似ている。 ただ明確に違うのは、魔法が『世界という意識の無いシステム』に干渉しているのに対し、『意識』に干渉しているという点だ。 この意識というのが召術における面白さであり、かつ厄介な部分でもある。 例え言語がかみ合わなくても、相手が気に入ってさえくれれば、意識は力をかしてくれる。 だが気に食わない相手では、どれだけ話ができたところで欠片も力をかしてはくれないわけだ。 つまり召術における呪文とは言語というよりは『交渉』であり、道具というのは『おみやげ』で、儀式は『もてなし』だったりするわけである。 これだけでも十分厄介だが、召術の厄介なところは、別にある。 それは『相手に気に入られすぎること』である。 どれだけこっちが迷惑だろうと、相手がよかれと思って予想以上の力をあたえてくることがある。 どれだけこっちが離れようとしても、向こうが気に入っていればどこまででも寄り添ってくる。 そして、気に入った相手を独り占めしようと、周りから孤立するように考えるものすらいる。 精霊や神でイメージがしにくければ、権力や財力や腕力に溢れたストーカーをイメージすればよいだろう。 そしてそのストーカーは、どれだけあなたが拒もうと絶対に離れてはくれないのだ。 好かれないとは力を貸してくれない、 しかし好かれすぎると身の破滅を招きかねない。 そんな舵取りの難しい力が召術である。―気術とは? 気術とは、『生命、物質、事象に宿るエネルギーを操作する術』である。 例えば、エネルギーを与えることで回復力を高める。 例えば、エネルギーを奪うことで衰弱させる(弱める)。 例えば、エネルギーの質を変化させることで特性を変質させる。 例えば、エネルギーの塊をぶつけることでエネルギーを消失させる。 エネルギーとは、存在するための力であり、気術とはその存在力を増減・変質させる力ということになる。 魔法的な術の多くに気術の概念が形や表現の仕方を変えて入っていることが多いほか、武器や格闘といった物理的な術にも、武術や気孔として取り入れられている。 魔法で起こした火に、エネルギーを多く注げば、よりよく燃えるし、逆なら静まる。 傷を塞ごうとする体にエネルギーを注げば、より早く傷は治るし、逆なら悪化する。 金属にエネルギーを注げば、より硬くなるし、逆なら脆くなる。 これが気の増減である。 では変質はというと、 熱に干渉する力を変質させ、熱くしたり冷たくしたりする。 時間に干渉する力を変質させ、早くしたり遅くしたりする。 集合する力を変質させ、拡散したり凝固したりする。 増減との違いはなにかというと、エネルギーの量はかわっていないということである。 例をあげて説明しよう。 『性質:燃える エネルギー:100』という術があるとする。 もし、エネルギーを増減した場合変わるのは、エネルギーの部分だけである。 燃えるという力は、どれだけ増減しようと燃える力なのである。 0に近づけば凍るのではなく、ただ燃えなくなるのである。 一方で、性質を燃えるから凍るに変えるとしよう。 その場合変わったのは性質だけで、エネルギーは100のままである。 つまり、100の力をもった凍る術になったわけである。 なお、気術における性質の変化は、主に類似する性質か、対立する性質に変わることが多い。 それは表裏のような関係や、ベクトルの関係でイメージするのがいいだろう。 矢印の長さは変わらない、変えたのはその方向性だけ…そういうことである。 この気術というのも、魔法と同じように才能に大きく左右される分野である。 『気(エネルギー)』というのを把握する力と操作する技術、双方が必要だからである。 一方で、エネルギーというものは基本的には当たり前に備わっており、増減しているものでもあるので、無意識に制御している者も少なくはない。―錬術とは? 錬術とは、『主に物体や生命体に干渉し、制御する術』である。 例えば、物体の構成を読み解き、別の素材で同じような物体を再現する。 例えば、生命体の情報を理解し、別の生命体の特徴を付加する。 例えば、モノが弾ける仕組みを組み替え、別の条件で爆発するようにする。 つまり、素材そのものの変質や、ルールやシステムの変更を行う術ということだ。 錬金術、 錬気術、 錬式術 錬〇術と呼ばれるものは、使用している方法論の違いや、結果に至るまでのアプローチの仕方が違うだけで、だいたいが同じ系統の術である。 物体Aから物体Bを生み出せるか? のように、物質の素材そのものや構成に着目したのが、錬金術。 物体に宿ったエネルギーに着目し、エネルギーを変質させたり増減させるとどんなことが起きるかに着目したのが、錬気術。 この点からいうと、錬金術は工学や科学寄り、錬気術は魔術や気術寄り、といえるだろう。 そしてそんな二つの錬術が合わさって生まれたのが、錬式術である。 おそらくは、皆さんが『錬金術』といわれて、一番最初にイメージするのに最も近いのがこの『錬式術』である。 入れ物としての物質と、中身としてのエネルギーという概念で捕らえ、それぞれをどう組み合わせ(足したり引いたり掛けたり割ったり)するかを考えるのである。 錬術の特徴として上げるのであれば、才能よりも研究と熟練度がものをいうところであろう。 科学や工学の特徴である、『同じ条件で同じことをすれば同じ結果が求められる』が基本にあるからだ。 そして錬気術に短を発する、気術的な難しさや才能差は、時代が解決していく。 多くの学者や研究者…錬術に携わった多くの者がその知識と技術を重ねた結果、それは道具を生み出していった。 道具は才能差を詰めることに成功し、より多くの発想とより多くの施行を許し、それが次の時代の財産となった。 そして、 魔術が一部の特殊能力でしかなくなった時代、 召術と呼べるほどの力を借りれる者がいなくなった時代、 気術が秘境や部族の伝統技となってしまった時代、 世界にどこででも見かけ、かつての魔術や召術や気術と同等の力を有したのが錬式術…つまり、錬術であった。―おわりに さて、長々とそれぞれの技能に関して解説してきたが、お別れの前に、例をあげ、それぞれの術の違いを明示しておこう。 下記は『回復効果を得る(傷を治す)』という目的のために、それぞれの術がどういう方法で行うかの例である。-魔法の場合-例1 時間に干渉し、自然治癒を高速化している例2 世界の仕組みに干渉し『○○の傷は瞬間的に治る』というような世界に改変した―召術の場合―例1 傷が早くなおる生命体(やその力)を宿し、治癒力を高めている例2 傷を治す力を持つ神に願い、傷を治している―気術―例1 気を注ぎ込み、自然治癒力を高めている例2 傷口から洩れていくエネルギーを塞ぎ、流出よりも生産力が勝るようにしている-錬術-例1 自然治癒能力を高める効果を付与した薬を投与する例2 擬似皮膚を張ることにより、流血やエネルギーの消耗を防ぐ 同じ目的でも達成方法には違いがあり、その達成方法そぞれには一長一短が在る。 使い手の得意不得意もある。 一口に『不思議な力』といっても、その裏には様々なルールやあり方もあるのだなぁと思えば、この世界の不思議な力の使用者達にも違いがみえるかもしれない… そしてそれが、新たな魅力や愛着に繋がるといいなと思いつつ、本日はこのあたりで。 それでは、また。 PR