幻想推古 花鳥風月 2017/07/28 スイコの幻想便り 其の一 ぬし様方、初会でありんす。あちきはスイコ、ますたーに命じられてお目見えしんす絡繰人形…「どーる」でござりんす。あちきの仕事は『幻想推古』を冠する…通称和パンドラと呼ばれるものでありんすが…物語をぬし様方に御紹介すること。他の物語ではお目見えすることはありんせんが、どうぞ末長うよろしくお願いいたしんす。さて、改めて此度の物語の概要を……―淡く、儚く、流れ逝け【幻想推古 ~花鳥風月夜話~】 日は昇り月は沈み、人は生まれ死んでいく。 木々は揺れ、水は廻り、鳥は羽ばたく。 時は刻み、本は捲れ、夢は覚める。 おおよそアナタの世界と変わらぬこの世だが、違うといえば幾許か… 妖しが笑い、魔は法と成り、神は在る。 そんな世界の話のいくつかを、 まとめて私はこう呼ぼう。 ―幻想推古 花鳥風月夜話 これは、今は昔の短編集。【花鳥 ―桜の元に眠れ死に体】 ある時、ある所、ある折のこと、 そこには『サクラ』という妖怪と、『桜』という木があった。 『サクラ』は『桜』の妖しで、気まぐれに人里を襲ってはその長い命を慰めていた。 しかしある時、鳥がいった。「お前さん、そんなに暇なら人でも育ててみたらよろしかろう」 妖しは気まぐれにそれを承諾し、 それは、楔と成った。「あぁ…今年も桜の元に死に体が増えるのか…」 これは、花と鳥と人と妖しの物語。【風月 ―魂籠風鈴】 月の綺麗な夜のことだった。 風も少なく蒸し暑い夜だった。「せめて、風鈴でも鳴ってくれればなぁ」 ある男がそんなことを思った時だった。「いらっしゃい。何をお探しで?」 気が付けば、見慣れぬ店と女主人。 怪しげな店ながらも、あるのは目移りするほどの逸品ばかり。 そんな店で男が選んだは、「道具の名は魂籠風鈴。虫でも花でもお好きな魂を閉じ籠めてご使用下さい」 こうして男の家に鈴が鳴る。 虫を籠めれば虫の音が、草木を籠めればざわめきが― そして男は店主との約束を違え、人の魂を籠めてしまう。と、二つの物語をお楽しみいただけんす。あちきもお稽古場にお邪魔していんすが、どちらの物語も和気藹々とお稽古に励んでいんした。そちの様子はお稽古場紹介の便りでご確認下さんし。さて、本日はここらで失礼いたしんす。またぬし様方にお目見えできんすように…… PR