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ヴォイニッチ 魔法とよばれる術

おおよそはじめまして、またはお久しぶりで。

 『はじまりはじまり』から『おしまい』まで、
 パンドラ童話集のあれやこれやに関する情報を収集している私、名前はヴォイニッチ。

 本日ご紹介するのは、『魔法』について。


―パンドラワールドにおける『魔法』の定義

 さて、魔法についてだが、魔法のことを『人力以外の不思議な力』などとしてしまうのは、いささか乱暴な定義といえよう。
 なぜなら『不思議な力』といってもその仕組みは多様だから。
 しかしあまりも細かく定義していくと専門的になりすぎる。

 なので入門として、今回は魔法の定義を以下のようにわけたいと思う。

 世界に干渉する力…魔法
 誰かに力を借りる力…召術
 生命力に干渉する力…気術
 物体に干渉する力…錬術



―『魔法』とは?

 魔法をおおざっぱにいうと、『世界の仕組みに干渉し、森羅万象(自然や事象)を操る』ことである。

 例えば、火が発生する仕組みに干渉することで、本来起きるはずのない場所に火を起こしたり、火力をあげたりすること。
 例えば、土や振動に干渉し、隆起させたり地震を起こしたりすること。
 例えば、重力に干渉し、限りなく重力を減退させたり、または増加させたりすること。
 例えば、空間に干渉し、瞬間移動を行ったり、時間を早めたり遅めたりすること。

 このように、意識やエネルギーに干渉するのではなく、仕組みそのものに触れる技術なわけである。

 魔術、
 妖術、
 魔女術、
 一部の呪術、
 一部の神術、
 法術、
 奇跡、

 このようなものが魔法に分類されるだろう。
 これらには根幹的な違いはなく、攻撃的なものが魔術、回復や補助などが法術など、性質的な分類で呼び名がかわることがある。
 または、悪魔などが使えば妖術や呪術、神父や信徒が使えば神術と呼ばれたりと、扱う者の特徴でかわることもある。
 が、あくまでイメージ的な分類に過ぎない。

 魔法を使う…つまり、世界に干渉する際は、呪文や儀式的な道具などを用いたりすることが多い。
 これは世界への干渉…つまり、世界との会話とでもいえばいいだろうか?
 または、皆さんの世界でいうならばパソコンなどをイメージしてもらうのがいいだろうか?
 『世界というモノ』に向けて『命令(お願い)』をするわけだが、世界の言語は根本的に人間のものとは違う。
 その翻訳機であったり、辞典にあたるものが魔導書や道具というわけである。

 が、人によっては視線を向けただけで発動させることもできる。
 つまり、道具や辞典などなくても他国のモノと意思疎通ができるようなものだろう。
 これは『世界』への干渉力の差で、適性が高ければ高いほど、より簡素な手続きで魔法を引き起こすことが可能となる。

 なお、より大規模な魔法にはそれなりに大規模な干渉を行う必要がある。
 つまり、より適切な表現やより長文を翻訳する必要がでてくる。
 こうなると、どれだけ道具や辞典を所持してようとなんともならない案件にもぶつかる。
 どれだけ勉強したところで、元々その言語を扱うモノ以上に喋れるのは稀なのと同じだ。
 そういう意味で魔法という概念は、修練よりも才能に重きが置かれる技術といえる。

 なおそんな魔法は、時代が進むにつれ扱える者が少なくなり、また扱える規模も縮小していく。
 それにかわるように台頭していくのが、錬金術や連式術といった、錬術である。



―『召術』とは?

 召術とは、『自分以外の生命体や意識体から、力や能力を授かる、またはそのものを呼び出す術』である。

 例えば、火の精霊(体そのものが火でできている)を呼び出すことで、火をおこす。
 例えば、神という存在に助力を乞い、本来起きるはずであったできごとを起きないようにする。
 例えば、獣のような存在を呼び出し、その獣のに戦って貰う。
 例えば、悪霊を体に宿し、その悪霊の力を上乗せして自身を強化する。

 このように、力の行使には必ず何者かの存在(力)が必要なわけである。

 召還術、
 精霊術、
 妖精術、
 一部の呪術、
 一部の神術、

 このようなものが召術とされる。
 呪文や道具を用いる点では魔法と類似した力といえる。
 対象に働きかけて力を引き出したり、何かを行う部分でも似ている。
 ただ明確に違うのは、魔法が『世界という意識の無いシステム』に干渉しているのに対し、『意識』に干渉しているという点だ。

 この意識というのが召術における面白さであり、かつ厄介な部分でもある。
 例え言語がかみ合わなくても、相手が気に入ってさえくれれば、意識は力をかしてくれる。
 だが気に食わない相手では、どれだけ話ができたところで欠片も力をかしてはくれないわけだ。

 つまり召術における呪文とは言語というよりは『交渉』であり、道具というのは『おみやげ』で、儀式は『もてなし』だったりするわけである。

 これだけでも十分厄介だが、召術の厄介なところは、別にある。
 それは『相手に気に入られすぎること』である。

 どれだけこっちが迷惑だろうと、相手がよかれと思って予想以上の力をあたえてくることがある。
 どれだけこっちが離れようとしても、向こうが気に入っていればどこまででも寄り添ってくる。
 そして、気に入った相手を独り占めしようと、周りから孤立するように考えるものすらいる。

 精霊や神でイメージがしにくければ、権力や財力や腕力に溢れたストーカーをイメージすればよいだろう。
 そしてそのストーカーは、どれだけあなたが拒もうと絶対に離れてはくれないのだ。

 好かれないとは力を貸してくれない、
 しかし好かれすぎると身の破滅を招きかねない。

 そんな舵取りの難しい力が召術である。



―気術とは?

 気術とは、『生命、物質、事象に宿るエネルギーを操作する術』である。

 例えば、エネルギーを与えることで回復力を高める。
 例えば、エネルギーを奪うことで衰弱させる(弱める)。
 例えば、エネルギーの質を変化させることで特性を変質させる。
 例えば、エネルギーの塊をぶつけることでエネルギーを消失させる。

 エネルギーとは、存在するための力であり、気術とはその存在力を増減・変質させる力ということになる。

 魔法的な術の多くに気術の概念が形や表現の仕方を変えて入っていることが多いほか、武器や格闘といった物理的な術にも、武術や気孔として取り入れられている。

 魔法で起こした火に、エネルギーを多く注げば、よりよく燃えるし、逆なら静まる。
 傷を塞ごうとする体にエネルギーを注げば、より早く傷は治るし、逆なら悪化する。
 金属にエネルギーを注げば、より硬くなるし、逆なら脆くなる。

 これが気の増減である。
 では変質はというと、

 熱に干渉する力を変質させ、熱くしたり冷たくしたりする。
 時間に干渉する力を変質させ、早くしたり遅くしたりする。
 集合する力を変質させ、拡散したり凝固したりする。

 増減との違いはなにかというと、エネルギーの量はかわっていないということである。

 例をあげて説明しよう。
 『性質:燃える  エネルギー:100』という術があるとする。

 もし、エネルギーを増減した場合変わるのは、エネルギーの部分だけである。
 燃えるという力は、どれだけ増減しようと燃える力なのである。
 0に近づけば凍るのではなく、ただ燃えなくなるのである。

 一方で、性質を燃えるから凍るに変えるとしよう。
 その場合変わったのは性質だけで、エネルギーは100のままである。
 つまり、100の力をもった凍る術になったわけである。

 なお、気術における性質の変化は、主に類似する性質か、対立する性質に変わることが多い。
 それは表裏のような関係や、ベクトルの関係でイメージするのがいいだろう。
 矢印の長さは変わらない、変えたのはその方向性だけ…そういうことである。

 この気術というのも、魔法と同じように才能に大きく左右される分野である。
 『気(エネルギー)』というのを把握する力と操作する技術、双方が必要だからである。
 一方で、エネルギーというものは基本的には当たり前に備わっており、増減しているものでもあるので、無意識に制御している者も少なくはない。



―錬術とは?

 錬術とは、『主に物体や生命体に干渉し、制御する術』である。

 例えば、物体の構成を読み解き、別の素材で同じような物体を再現する。
 例えば、生命体の情報を理解し、別の生命体の特徴を付加する。
 例えば、モノが弾ける仕組みを組み替え、別の条件で爆発するようにする。

 つまり、素材そのものの変質や、ルールやシステムの変更を行う術ということだ。

 錬金術、
 錬気術、
 錬式術

 錬〇術と呼ばれるものは、使用している方法論の違いや、結果に至るまでのアプローチの仕方が違うだけで、だいたいが同じ系統の術である。

 物体Aから物体Bを生み出せるか? のように、物質の素材そのものや構成に着目したのが、錬金術。
 物体に宿ったエネルギーに着目し、エネルギーを変質させたり増減させるとどんなことが起きるかに着目したのが、錬気術。

 この点からいうと、錬金術は工学や科学寄り、錬気術は魔術や気術寄り、といえるだろう。

 そしてそんな二つの錬術が合わさって生まれたのが、錬式術である。
 おそらくは、皆さんが『錬金術』といわれて、一番最初にイメージするのに最も近いのがこの『錬式術』である。

 入れ物としての物質と、中身としてのエネルギーという概念で捕らえ、それぞれをどう組み合わせ(足したり引いたり掛けたり割ったり)するかを考えるのである。

 錬術の特徴として上げるのであれば、才能よりも研究と熟練度がものをいうところであろう。
 科学や工学の特徴である、『同じ条件で同じことをすれば同じ結果が求められる』が基本にあるからだ。
 そして錬気術に短を発する、気術的な難しさや才能差は、時代が解決していく。
 多くの学者や研究者…錬術に携わった多くの者がその知識と技術を重ねた結果、それは道具を生み出していった。
 道具は才能差を詰めることに成功し、より多くの発想とより多くの施行を許し、それが次の時代の財産となった。

 そして、
 魔術が一部の特殊能力でしかなくなった時代、
 召術と呼べるほどの力を借りれる者がいなくなった時代、
 気術が秘境や部族の伝統技となってしまった時代、
 世界にどこででも見かけ、かつての魔術や召術や気術と同等の力を有したのが錬式術…つまり、錬術であった。



―おわりに

 さて、長々とそれぞれの技能に関して解説してきたが、お別れの前に、例をあげ、それぞれの術の違いを明示しておこう。
 下記は『回復効果を得る(傷を治す)』という目的のために、それぞれの術がどういう方法で行うかの例である。


-魔法の場合-
例1 時間に干渉し、自然治癒を高速化している
例2 世界の仕組みに干渉し『○○の傷は瞬間的に治る』というような世界に改変した


―召術の場合―
例1 傷が早くなおる生命体(やその力)を宿し、治癒力を高めている
例2 傷を治す力を持つ神に願い、傷を治している


―気術―
例1 気を注ぎ込み、自然治癒力を高めている
例2 傷口から洩れていくエネルギーを塞ぎ、流出よりも生産力が勝るようにしている


-錬術-
例1 自然治癒能力を高める効果を付与した薬を投与する
例2 擬似皮膚を張ることにより、流血やエネルギーの消耗を防ぐ


 同じ目的でも達成方法には違いがあり、その達成方法そぞれには一長一短が在る。
 使い手の得意不得意もある。
 一口に『不思議な力』といっても、その裏には様々なルールやあり方もあるのだなぁと思えば、この世界の不思議な力の使用者達にも違いがみえるかもしれない…
 そしてそれが、新たな魅力や愛着に繋がるといいなと思いつつ、本日はこのあたりで。

 それでは、また。
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ヴォイニッチ 言語と文語

おおよそはじめまして、またはお久しぶりで。

 『はじまりはじまり』から『おしまい』まで、
 パンドラ童話集のあれやこれやに関する情報を収集している私、名前はヴォイニッチ
 本日皆様にお伝えするのは、『言語と文語』


―言語と文語

 まずこれから語るにあたり、言語と文語の違いを挙げておこう。
 人や辞書によって解説に違いはあると思うが、とりあえずこのコラム(?)中においては、

 言語=話し言葉、会話、音声
 文語=書き言葉、文章、文字

 ということにしてもらいたい。



―言語

 パンドラワールドの言語は、ある時代を境に統一されている。
 それは御伽期。

 それ以前は言語は国や地方によってバラバラで、言語による意思の疎通は困難を極めた。
 しかし御伽期で活躍したある少女の願いによって、言語は統一を果たされる。

 言語統一に用いられた手段は『カミに世界のあり方を願うこと』。
 少女は『カミの欠片(カムカ)』の力を借り、その身を代償とすることで世界の言語を1つに結んだのだ。

 統一された言語を『新言語』や『統一言語』と呼称しよう。
 それに対し、それまでに使われていた何百種類もの言語は『古代語』としてひとくくりにされ、使われなくなっていった。

 ただ、方言や慣用句、または単語として新言語に残った例もある。
 


―文語

 言語が統一された後、文語もまた少しづつではあったが統一されていく。
 ただし、文語そのものはカミによって統一されたわけではなく、人の手によって行われていった。
 それは、新言語と古代語の間における発音や単語の違いを埋めることが主な目的であった。

 しかし、人の手によって行われた新文語とでもいおうものは、新言語と同じように1つにまとまることはなかった。
 なぜなら多くの新文語は、元々その地域で使われていた古代語を下地に作られたものだったからである。
 そのため元の言語圏を中心としたいくつかの主流文語や、そこから枝分かれした派生文語が存在した。
 そしてそれらの文語は時代によって形や勢力圏を変えたとしても、歴史の終わりまで全てが1つになることはなかった。



―個語、特語 

 さて、言語が統一され、文語もある程度のまとまりに変化していく中、一般的でない言語や文語が生まれたりもする。
 それは、個別の言葉で個語とか、特別(特殊)な言葉で特語、などと呼ばれたりもする。

 典型的な例でいうと、暗号文などがそれらに当たる。
 統一されたが故に、本来は知られたくない、知られなかった言葉が理解されるようになってしまったため、秘匿用の文章や暗号が考案されたのだ。
 国などの公的機関、
 研究記録、
 地下組織、
 こういったところで特に使用された。

 また、別の典型では、呪文などもそれに当たる。
 統一言語を使用した魔術ももちろんあるが、古代語や独自の言語体系で作られた呪文はかなりの数になる。
 力の強い魔法使いや、秘密主義的な錬金術師などは特に、個語や特語を用いることが多かった。
 これは、魔法の多くが世界のシステムを利用することに起因する。
 世界の視点からみると、人間とはシステムの1種類でしかなく、人間の言葉の統一とはシステムを一本化したようなものといえる。
 しかし、世界には人間以外にもシステムがあり、それらは個別に適した言語でプログラムが組まれている。
 つまり魔法とは、人間というシステムが別のシステムを利用するようなものである。
 であれば、利用するシステムにより近い言語の方が、早く、効率よく動作するわけである。
 間に通訳を挟んで会話するよりも、自分がいくつかの言語を使用できるほうがコミュニケーションをとりやすいのと同じようなものである。



―おわりに

 言葉の違いから生まれた悲劇を亡くすため、かつて少女は言語の統一を願った。
 しかし言語は統一されても悲劇はなくならなかった。
 それは人のせいか、カミのせいか、はたまた世界のせいか…

 私程度のモノにはなんとも答えがたい問題であるが、いつかその答えが出るときに、少女の願いは叶うのかもしれない。
 分かり合えるということが幸せなことか、不幸なことかは置いておくとして…

 では、本日はこのあたりで。
 それでは。

ヴォイニッチ:食糧事情



 おおよそはじめまして、またはお久しぶりで。

 『はじまりはじまり』から『おしまい』まで、
 パンドラ童話集のあれやこれやに関する情報を収集している私、名前はヴォイニッチ。

 本日ご紹介するのは、『食糧事情』について。


―何を食べる?

 あなたの世界がそうであるように、パンドラワールドの住人にも地域差や個人差がある。
 主食でいえば、麺、パン、米、イモ類、などがあがるだろう。
 おかずや汁物になれば無数とあり、それらの解説は専門書に任せるべきだろう。

 なので、カレーやシチュー、ハンバーグ、からあげ、ボルシチ、ラーメン、たくあん…
 おおざっぱに説明させてもらう なら「あなたが想像するような料理は世界のどこかにある」と思って頂いて構わない。
 ただ、それらの料理に使われる材料や調理手順、料理名などはあなたの世界とは違うこともある。

 あなたの世界に比べれば少しばかりおかしなこともある世界の人間達も人間であるということだ。



―食糧供給の方法

 さて、そんな人間達はどうやって食料を手に入れるのか?
 主に以下の4種になるだろう。
 【農耕】【畜産・養殖】【狩猟・漁業・採取】【魔工】だ。

 農耕は、田畑を耕し農作物を得るもの。
 こちらの世界の人間は、規模はあまり大きくなかったとはいえ、比較的早い段階からこれを行っていた。
 それは、彼らに農耕の技術や知識を教えた、または労働を任 せた神などがいたからだ。
 自分達の食料は自分達で作れるように、または貢物として神が欲する食物を作れるように仕込まれたのだ。
 その技術と知識は神々が姿を消しても引継ぎ育まれ、人々の生活の礎となった。

 畜産・養殖は、動物や魚などの生き物を自分達で育て、その肉などを得るもの。
 こちらも早い段階から行っていた。
 理由は、農耕とほぼ同じ。
 
 狩猟・漁業・採取は、肉、魚、食物などを自然から手に入れるもの。
 興味深いのは、この方法(とくに狩猟)による食料獲得の多くは、嗜好品や高級品目的となることが多いこと。
 理由は時代によって異なるが、例えば時代の始まり頃、人間は狩をする必要性があまりなかった。
 なぜなら…そう、神からす でに農耕や畜産を与えられていたから。
 ある程度の集団であればなんらかの手段で食料は得られることが多く、供給が安定しない手法は調達の主役ではなかった。
 が、野生でしか取れない食材などもまた多く、それらを欲す者は一定数いたため、これらの手法がなくなるということもまたなかった。

 最後に魔工だが、これは魔法や錬金術、科学や工学、それらの融合した魔工学などにより生み出されるモノだ。
 例えば、1つの食材を元に2つの食材を生み出す技術、
 本来食べ物としては不適切な物質を組み替え、食料に変換する技術、
 食事をしなくとも生きるのに必要なエネルギーを得るための技術、
 そういったものがこの世界にはある。

 時代によって比重に差はあるが 、この世界ではこれらの手段によって食事(またはエネルギー)が供給されている。


―調理と加工品

 そんな風に供給される食料は、人の手を経て調理される。
 焼いたり煮たり蒸したり混ぜたり…中には魔法を使ってよくわからない何かを生み出してしまうこともある。
 さてそんな調理の中から、加工品に分類される食べ物を少しご紹介しよう。

 加工品の代表といえば、保存食だろう。
 冬を越すためだったり、離れた土地に運ぶためだったり理由は様々だが、日持ちするように処理されたものだ。
 主に乾燥させる調理法を用いられるが、缶詰のように腐敗を防止する入れ物につめたものや、ハムやソーセージ・チーズなど燻製したもの、魔法の類で時間経過を著しく遅くし たモノなどもある。

 次に携帯食。
 見た目や味よりも、小型化かつ栄養摂取を目的とされており、冒険者や兵士などが愛用した。
 煮詰めて水分を飛ばし小さくしたものや、栄養素を取り出して丸薬のようにしたものなど様々だ。
 目的が『携帯すること』なので分類をわけたが、保存食の技術と合わせて使われることも多い。

 最後に機能食。
 これは能力食とか儀式食、魔法食や媒介食、などなど、もっと細かい分類や別の名前で紹介されることもある。
 いずれにしろこれらに分類される食品は、その目的が『栄養摂取』ではないというのが特徴だ。
 例えば、食べることにより魔力や筋力が上昇するもの、
 服用することで体力が増加したり、自然治癒力が高まるもの、
 食べることで一時的に精霊とよばれるモノの力を借りることができるもの、
 そういった『食べることによって起きる機能の発現』を目的として作られている。
 もちろん、中には食べるとそうなると『思いこまれてる』だけの迷信めいたものもあるのだが…


―『禁断』の『食べる』

 さて、紹介するかどうかいささか悩んだが、あえて触れることとしよう。
 この世界において、どちらかといえば嫌悪する者の方が多い、またははっきりと多い食材に関して…

 まずは『魔物食』。
 そもそも動物と魔物は何が違うのかというのは他に任せるとして、この世界で魔物を食べるのはポピュラーとはいえない。
 あなたの世界でいうところのゲテモノ食い、あるいは珍味をイメージ してもらうのがいいだろうか…
 例えばあなたの世界にも、虫やその卵、あるいはカエルやヘビなどを食べる地域や其の調理法などがあるだろう。
 が、わざわざ他に食べるものがあるのに好んで食べるかといわれると、それは少数といえる。
 こちらの世界で魔物を食べるというのはその感覚に似ている。
 ただし、魔物によってはその肉が保存に適していたり、あるいは手を加えることで携帯に便利だったり、魔力を摂取できたりと加工品として優秀な場合がある。
 そのため、冒険者や魔法使いなどの類は、一般人に比べて魔物食への抵抗が少ないことも多い。

 そんな魔物食よりもはっきりと嫌悪を示されるのが『人肉食』である。
 食料として用いられるのは、通常の食卓に並べる ようとなることはほとんどなく、特殊な状況下であることがほとんどだ。
 例えば、閉じ込められ飢え死にしそうな時など、緊急避難的なもの。
 また例えば、部族の儀式として英雄の肉を取り込むことでその力を得るためだったり、
 あとはまぁ、人肉を食べることに幸福を感じるためだったり…
 
 魔物や人肉以外だと、土だとか宝石だとかを食べるなどもある。
 これは物質に宿るエネルギーや栄養素を得ようという試みから行われたもので、時代によっては強い嫌悪があった。
 だが後期では、最初の方に触れた『魔工』により、ふりかけのようにして食べる土がうまれたり、宝石からエネルギーだけとりだして食材に移した果物ができたりと、食材や調理法が広まるにつれ、食卓での権 利を獲得していった。
 もちろん、普通の食材に比べれば抵抗を持つ人がいたのは確かだが。


―終わりに

 人は生きるために食べるのか、食べるために生きるのか?
 そんな疑問を浮かべた学者もいた。
 多くの者がその疑問にそれぞれの答えを出したが、残念ながらすべての者が納得する答えは生まれていない。
 しかし今日も、どこかで食料は生まれ、料理はできあがる。

 だとしたらアナタは、その料理が冷める前においしく頂くことを選ぶだろうか?
 それとも、料理が冷めようとも答えを求めるだろうか?

 そしてもし、あなたが『食べる』ということを必要としない人だったとしたら…
 はたして人はなんのために生きると思うか、ぜひご意見をお伺いしたい 。

 では、本日はこのあたりで。
 それでは。

ヴォイニッチ ~空~

『はじまりはじまり』から『おしまい』まで、
 パンドラ童話集のあれやこれやに関する情報を収集している私、名前はヴォイニッチ。

 本日ご紹介するのは、『空』について。


―パンドラ世界の空事情

 パンドラワールドにおいて『空』とは、地上より上からはじまり、みなさんの世界でいうところの宇宙と呼ばれる領域までの間を指す。
 そんな空は、地上から一般的な山脈程度の高さ…または雲が発生するあたりを境に、下と上で大きな違いがあらわれる。

 空の上方には目に見えない力…魔力や気などとよばれているエネルギーの流れが、渦潮のように流れ、ぶつかり続けている。
 この流れにより発生する強風や衝撃は、ただそれだけで下手な魔法よりも強い力をもっており、雷が落ちる原因の1つでもある。
 この力を超えられるものはほとんどなく、生き物が空へ羽ばたくための、または宇宙へと至るための大きな障害となっているのは間違いない。

 が、この魔力と風は別の側面ももっている。
 空へと登ってきた水蒸気や塵などがこのエネルギーと反応して雲ができているのだ。
 雲はほどよい雨を降らしたり、ほうっておけば広がり続ける水滴を集めることで日光を地上に送ったり、逆に適度な日陰を提供する。
 そして風が雲を運ぶことで、世界のあちこちに雨と日光と日陰がいったりきたりするわけだ。

 このように、非常に重要な役割を持つエネルギー層。
 前述の通り、一緒くたに語れば上も下も空ではあるが、よりわけて語ることもできる。

 エネルギー層溢れる上層を『高空』、
 それよりも下が『低空』である。


―空と生き物

 基本的に、高空は生き物が住めるような環境ではない。
 しかし例外はある。
 例えば、古い時代において神と呼ばれたものや、その眷属。
 彼らはその力をもって自由に空と地上を行き来したし、場合によっては空の力を利用することもあった。
 天気や空にまつわる神や、いわゆる天使と呼ばれるようなモノたちが有名どころである。

 高空に含まれる範囲の中でも、比較的穏やかな流れを保っている場所や時期を狙えば、鳥族や猫族などの獣人族も高空に姿をみることもある。
 ただしこの場合は住むではなく、敵の少ない移動ルートとしての一時的な活用がほとんである。
 移動しているのは確かだが、移動の途中を発見されない渡り鳥などが代表例。
 また、人間族の中でも、古い時代の魔法使いには高空を飛べるものがいたという。

 そしてそれらの姿は、やがて御伽噺と同じような扱いへと…
 発見も再現もできない姿へとかわっていくことになる。



―人間、空への挑戦

 時代が下がるにつれ、人は空から遠のいた。
 魔力も、それにかわる技術ももたない人間は、空に辿り着く力を失っていたからだ。
 だが、憧れは残り続けた。
 ある者は地底を、またある者は深海を目指したように、空を目指すものものがいた。

 彼らは空へ至るための道を追い求めた。
 失われた空を飛ぶ魔法を再度編み出そうとした。
 空を飛ぶ乗物を生み出し改良し続けた。
 雲を突き抜けるほど高い山をその足で登り続けた。

 どの道も、楽な道ではなかった。

 失われた技術は、みつけるだけで人生が尽きることもある。
 よしんば見つかっても、技術を生かすだけの魔力がないことも多々あった。

 乗物の多くは、地を離れることすらできなかった。
 離れたとしても、多くが再び地面に引き戻され、そして瓦礫となった。

 地面から伸びている道を歩くだけとはいえ、山登は時に命をかける冒険となる。
 空と風と魔力だけではなく、獣に大地に飢えにと、障害が尽きることはなかった。

 それでも、彼らは諦めなかった。

『空へ』

 研究と研鑽は人を超え、時代を超え、繋がり続けた。
 1人でだめなら10人が、
 10人でダメなら100人が、
 そして、時も同じ。

 それらがやがて実を結ぶ時が来る。
 それは歴史の後半、
 一度は滅びかけた文明が力を取り戻した復興期より後、
 空に『飛行船』や『飛空挺』とよばれる乗物が行き交う時代がやってくるのだった。



―空の乗物

 さてここで、空を行く乗物で代表的なものをあげよう。

 1、気球
 2、飛行船・飛空挺
 3、飛行機

 どれも、みなさんの世界にあるものと基本はそう変わらない。
 ただし皆さんの世界にある『ジェット機』や『ロケット』などと呼ばれるものはこの世界には存在しない。 
 理由は1つ。
 安定して飛べるのは『低空』に限られたからだ。

 後世でも高空を飛べるような乗物は基本的には完成せず、高度1万メートルもの上空を飛ぶ必要がある飛行機などは空想の物でしかなかった。
 パンドラ世界で飛行機と呼ばれる乗物は、低空を飛ぶ小型の(大きくても10人程度)の指し、速度や戦力としての研究はされたが大型化はされなかった。

 かわりに、気球、飛行船、飛空挺は発展を続けていった。
 ガスを利用した単純なものだけではなく、魔力を利用した推進装置を取り付けたものや、居住区や商店などまで備わった巨大なものなど様々なものが作られた。

 それらに利用されたのは、悩まされ続けた高空のエネルギー。
 地上よりも多くのむき出しのまま放置されたエネルギーに目をつけたのだ。

 なお、この考えを利用した道具が『神魔期前』頃には誕生している。
 とある国の姫が作り出したソレは『伝書箱』などと呼ばれたものだ。
 気球などと比べるとはるかに小さい、名前の通り手で持てる程度の箱だったが、それは確かに空を飛んだ。
 箱に取り付けられた羽状の部品が、空の魔力と風を原動力に羽ばたいたのだ。
 そしてこの箱は郵便機能の一部として利用され続けた。



―空の整理

 地上を行くよりも障害物が少なく、海を行くよりも抵抗の少ない空は、移動に適した場所だった。
 だが、それ故に衝突も多かった。
 特に伝書箱が飛空挺にぶつかり、送ったはずの郵便物が届かない…なんてことが、空の交通の黎明期には良くおきた。
 そこで、世界の共通ルールのようなもの生まれ、そこから新しい空の区分が生まれた。

 元々『低空』とよばれていた空を、さらに二つにわけたのだ。

 高空からエネルギーを供給しなければ維持が難しい飛行船や飛空挺が行き交う、低空の中でも上方を『中空』と定義した。
 そしてその下…中空の下をもともとの『低空』という呼び方で呼び、そこを伝書箱などが行き交った。

 飛行機はどちらの中空にも低空にも見られたが、その理由は飛行機の使われ方の1つに『護衛』があったからだ。
 海で言えば、巡洋艦に護衛艦が共に移動するような、
 陸で言えば、馬車に騎乗した兵士が随伴するような、そんな感じである。
 


―終わりに

 さて、そろそろ本日の締めへと入ろうと思ったがそのまえに、ウソか本当か、空にまつわる話しをいくつか。

 例えば、空にあるという神殿の話し。
 この神殿には『語戦乙女(かたりぐさおとめ)』などと呼ばれる者がいて、地上におりては戦士の魂を集めているのだという。

 また例えば、満月の空を猫と共に歩く少年の話し。
 猫族、または猫と歩く子供の姿は、満月の夜に聞く定番の話である。

 雲の神様と涙の雨を降らす女の子の話もある。

 空…というよりは宇宙に近いが、世界の果ての扉の話も有名である。

 こうしてまとめている瞬間にも、新しい空にまつわる話が生まれているのかもしれない。
 そしてそれはきっと、人間が空に抱いた憧れのせいに違いない。

 それでは本日はこんなところで。

ヴォイニッチ ~魔法と演劇~

おおよそはじめまして、またはお久しぶりで。

 『はじまりはじまり』から『おしまい』まで、
 パンドラ童話集のあれやこれやに関する情報を収集している私、名前はヴォイニッチ。

 本日ご紹介するのは、『魔法と演劇』について。


―魔法芸術

 今回は演劇と魔法というテーマゆえに紹介する程度にとどめるが、芸術に魔法が用いられた例は枚挙に暇が無い。
 それは創り手達のあくなき探究心や想像力、もてなす心、驚かせる心、遊び心、そういったものの現れだろう。

 描いた絵を動かしたい、
 演奏した曲を何度でも聴けるようにしたい、
 創った人形と話がしたい、
 自動で本を執筆させたい、

 おおよそアナタが思うことは、誰かが実現させただろう。
 そしてそれは『演劇』という分野においても然りである。



―魔法と演劇の歴史

 歴史からいってもかなりの昔から…それこそ、神々の時代から、『演劇』には特殊効果として『魔法』が取り込まれていた。
 風の魔法で人物の髪や服をたなびかせたり、霧を生み出しスモークとしたり、声を拡大化する魔法で声量の補助をしたり、幻で背景を付けたり…
 おおよそアナタが『魔法でこんな効果ができるのでは?』と思ったことは、過去誰かが実現したことがあるといっても過言ではなかろう。
 時代によっては『シンプルなセリフ劇=ストレートプレイ』と『魔法効果を用いた劇=マジカルプレイ』と区分されたこともあるほどだ。

 特に、科学や工学の発達が遅れていた神魔期前までは、舞台効果といえば魔法を用いたものが主流だった。
 それこそ、創生の六神…リクドゥ達も魔法を用いた演劇(や様々な表現活動)を行っていた。
 リクドゥを見ていた神がそれをマネ、
 神を見ていた他の生き物がそれをマネ、
 他の生き物を見ていた人がそれをマネ、
 そうして演劇と魔法は共に親しまれ、育っていった。

 転機が訪れたのは、神魔期頃。
 この頃になるとそもそも魔法を使える人物は昔ほど多くなく、卓越したものともなればなお更だった。
 例えになるが、魔法を用いて2時間光を付け続けるというのは、2時間ランニングしろ、というのと同じようなものだと思えばわかるだろうか?
 しかもシーンによってはより駆け足になったり、逆に遅くしたり、山道を登るかのごとく明るくしたりすることもある。
 世の中広い故に、苦もなくできる者もいるだろう。
 訓練すればできるものも増えるだろう。
 だが、絶対数が足りないのだ。世界のあちこちにある劇場全てに、魔法効果を扱える術者がいるほどこの時代の魔法環境はよろしくなかったというわけだ。



―装置としての魔法へ

 魔法効果が難しいとなると、人々は効果を通常のモノに頼らざるをえなかった。
 つまり、明りならロウソクやランプ、ライトなど。
 魔法が伸び悩みによる需要から進歩が始まった科学や工業が、これら効果を支えることとなった。
 そして学者たちが錬金術の流れを汲む『錬式術』や『魔工学』を発展させることで、舞台には再び魔法が戻ってくることとなる。

 昔、風を起こすのは術者…つまり人だった。
 先の時代、風を起こすのは装置…つまり道具になった。

 必要なエネルギーがあれば、魔法ほど難しい技術や卓越したセンスがなくても効果を生み出せる道具が生まれたのだ。
 道具はけして安いものではなかったが、人に比べて『生産』し『配置』しておくことができる。
 術者1人いれば光も水も炎もなんでもできた時にくらべれば不便だが、装置の種類を揃えることで補うことは可能だ。

 世界規模でいうなら、兆しが見えたのは神魔期の終わりごろ。
 本格的に戻ったのは復興期…特に、森林学園都市の影響が大きかったといえる。
 いずれにしろ演劇には、再び魔法が組み込まれるようになった。



―終わりに

 ツールとの出会いは、文化を変える。
 ツールの力が強すぎて文化そのものが終わったり、変わったりすることもあるが、それもまた歴史…

 ただ、どんな歴史の中にだって言えることはある。
 アナタの世界からすればファンタジーな世界の人間達は、ファンタジーな世界にいてもなお、芸術に更なる夢を求め、願いを込めたのだ。
 それはきっと、アナタが舞台を求めるのと同じような理由で。

 では、本日はこのあたりで。
 それでは。



        
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